かつて、人間界と魔界を隔てる薄い境界線の向こうに、恐れられていた魔王がいた。彼の名はゼフィロス。世界を支配する野望を持つゼフィロスに対抗するため、勇者リオは最強の呪いを魔王に向けて放った。しかし、予想だにしなかったことに、呪いはゼフィロスによって反射され、リオ自身に跳ね返ってきたのだ。
この奇妙な出来事は、両者の間で長年続く不条理な呪いの応酬へと発展する。リオが呪いを送ればゼフィロスはそれを返し、ゼフィロスが呪いを送ればリオがそれを返す。何年にもわたるこの戦いは、世にも珍しい形の対立へと変わっていった。
ある日、リオは呪いの中に短いメッセージを添える方法を見つけた。「お前の呪いを返すなど、朝飯前だ！」という挑発に対してゼフィロスは「夕食後の運動にもならん、つまらない呪いだな！」と応酬した。この小さな変化はやがて両者の間で意思疎通の手段へと発展する。
時が経つにつれ、彼らのメッセージは罵倒から日常の出来事、趣味の話、そして夢や希望について語り合う内容へと変わっていった。何年もの間、敵としてしか見てこなかった二人は、お互いの人生、価値観、さらにはお互いの世界への理解を深めていく。
「魔界の料理は美味いぞ」とゼフィロスが書き、リオは「人間界の音楽も悪くないだろう？」と返した。このように、かつては呪いで争っていた二人が、今では共通の関心事で絆を深めていた。
そしてついに、リオとゼフィロスは面会することを決意する。境界線の真ん中で、彼らは初めて直接対面した。しかし、互いに向けるのは呪いではなく、長年の文通が育んだ深い理解と友情だった。
「呪いで始まった関係が、こうも変わるとはな」とリオが言うと、ゼフィロスは微笑み返した。「人間と魔族の間にも、理解し合える道はある。お前とのやり取りがそれを教えてくれた」
二人の間の呪いは解け、それぞれの世界に平和の橋をかける最初の一歩となった。リオとゼフィロスの奇妙な友情は、両界に新たな希望の光をもたらしたのだ。
