騎士の兄に憧れていた少年は、勇敢な騎士になることを夢見ていた。その日も、剣を振り回しながら訓練に励んでいたが、気が付けば足元に広がる花壇を踏み荒らしてしまっていた。そこには美しい花を咲かせるための球根が植えられていたのだ。
「何してるの！ その花壇、私が大事にしてたのに！」
近所の少女が声を荒げる。少年は一瞬言葉を失った。気付かぬ間の破壊行為に、自分でも驚きと共に、なんとも言えない罪悪感が心を覆った。
しかし、素直に謝ることができずにいた。プライドが邪魔をする。ただ黙って少女の怒りに耐えるしかなかった。
その様子を見ていた兄は、後で少年を呼び出した。「命を懸けて戦うことだけが勇気じゃない。間違いを認め、謝る勇気もまた、騎士にとって大切なんだ」と静かに語りかける。
少年は、兄の言葉に心を打たれた。翌日、彼は少女の家を訪れた。手には花の種と小さなスコップを持って。
「昨日はごめん……。この種、一緒に植えてくれないか？」
最初は驚いた表情を見せていた少女も、少年の真摯な眼差しに触れ、やがて微笑んだ。「いいよ。でも、今度からは気をつけてね」
二人は花壇を再び美しくするために、一緒に種をまき始めた。その瞬間、少年は真の勇気が何かを学んだ。そして、未来に咲く花のように、新たな友情の芽生えを感じていた。
