森の深く、人の手が及ばぬ場所に、白馬が住んでいました。彼は森の守り神として、長い間、森を見守ってきました。人間に対しては、特に関心も持たず、彼らが森を荒らすことだけを警戒して生きていました。
ある春の日、白馬は森の中を歩いていると、小さな人間の子供を見つけました。少女は泣いておらず、ただ静かに空を見上げていました。彼女のまわりには、人間の足跡も、彼女を探す声もありませんでした。白馬は少女を見つめ、少しの間考え込んだ末、彼女を背中に乗せて、森の奥深くへと連れて行きました。
白馬は少女に食べ物を与え、寒い夜は彼の暖かい毛皮で少女を温めました。少女もまた、森の中で見つけた薬草を白馬に持ってくるなど、彼に感謝の意を示しました。次第に一人と一頭は互いに必要な存在となり、深い絆で結ばれていきました。
白馬は少女が人間の世界に戻るべきだと考えていましたが、少女は人間を恐れ、白馬と森の中で生きていくことを望んでいました。白馬は少女の意志を尊重し、二人で森の中を生きていく決意をしました。
白馬は少女と暮らすようになってから、森の中で困っている人間がいると助けるようになりました。助けられた人間は白馬に深く感謝しました。
ある日、近くの村から来た人間が白馬を見つけ、彼を捕えようとしました。しかし、白馬がこれまでに助けた村の人々がそれを止め、人間を追い返しました。その出来事から、少女も白馬と一緒に人を助けるようになり、徐々に村の人々との間に交流が生まれました。
少女は白馬の背に乗って、迷い込んだ人を案内したり、薬草を分け与えたりしました。白馬と少女の優しさは次第に人々に広まり、彼らは森の守り神として、そして人間と自然の架け橋として尊敬されるようになりました。
時が経ち、少女は成長しましたが、彼女は決して人間の世界に戻ることはありませんでした。彼女にとって、白馬こそが、真の家族であり、家だったのです。白馬と少女は、森を守りながら、人と自然が共存する方法を示し続けました。そして、彼らの物語は、長い間、人々に語り継がれることとなりました。
