ある病院の病室に、二人の入院患者がいた。一人は盲目で、もう一人は窓際のベッドに寝ている男性だった。毎日、窓側の男性は盲目の患者に外の景色を描写して聞かせていた。彼の話には、季節の変化、遠くの山々、近くを飛ぶ鳥の姿など、生き生きとした外の世界が詰まっていた。これらの話は、盲目の患者にとって、長い入院生活の中での唯一の楽しみであり、希望の光だった。
「今日は、公園で子供たちが遊んでいるよ。彼らの笑顔がとても明るいんだ」窓側のベッドの男性がいつものように話し始める。彼の声は弱々しくも温かみがあり、病室に小さな幸せを運んできた。その声は、盲目の患者にとって、眼に映ることのない景色を心の中に描く魔法のようなものだった。
しかし、ある日、その魔法は突然終わりを告げる。窓際の患者が静かにこの世を去り、盲目の患者はそのベッドに移された。
しばらくして、彼の家族が見舞いに来たとき、彼は懇願した。「外の様子を教えてほしい。今日はどんな景色が広がっているんだ？」と。
家族は驚いて答えた。「窓からは隣の建物の壁しか見えないよ」
心の底から湧き上がる失望感とともに、彼は理解した。窓側の患者は、自分に希望を与えるために、美しい景色を想像して話してくれていたのだ。外の世界を見ることができない彼に、夢と希望を与えるために。
その瞬間、彼は深く感謝の気持ちに包まれた。窓から見える景色はなかったが、心の中には、亡くなった隣のベッドの男性がくれた希望の光がしっかりと灯っていた。
