ある夏の夜、地元の高校生たちが集まり、廃墟となった古い洋館で肝試しをすることになった。彼らは勇気を出して、一組ずつ洋館の中を探検していく。月明かりだけが頼りの中、彼らは冗談を言いながらも、心のどこかで恐怖を感じていた。
洋館の中は予想以上に広く、複雑な構造になっていた。彼らは廃墟の美しさにも驚きながら、壁にかかった古い肖像画や、埃をかぶった家具を見て回った。ところが、彼らが集合場所に戻ってきたとき、不思議なことに一人の姿が足りないことに気がついた。
「あれ？ 誰かがいないぞ」
しかし、彼らはどうしても誰がいないのかわからなかった。全員が互いの顔を見合わせるが、明らかに一人少ない。名前を呼んでも、全員が「はい」と答える。しかし数を数えると、確かに一人分足りないのだ。
不安と混乱が彼らを包み込む中、一人の生徒が提案した。「もう一度、洋館の中を探してみよう。もしかしたら、誰かが道に迷っているかもしれないから」
彼らは再び洋館の中に入り、部屋から部屋へと声をかけながら探し回った。しかし、結局、誰も見つからなかった。そして、何度数え直しても、人数は変わらず一人少ない。
翌日、彼らはそのことを学校の先生や警察に報告したが、誰がいなくなったのか特定できないため、捜索も難航した。不思議なことに、誰も具体的に「誰がいないのか」を思い出せなかったのだ。
数週間が過ぎ、彼らの間ではその夜のことが都市伝説のように語られるようになった。いなくなったはずのその「誰か」は、彼らの記憶からも消え去ってしまったかのようだった。
そして、彼らは気がつく。その夜、彼らと共にいたはずの「誰か」は、最初から存在しなかったのではないかと。しかし、その不可解な出来事の真相について、誰も知る由もなかった。
