それはある小さな家族の話。彼らは、普段から互いにほとんど言葉を交わさず、それぞれが自分の世界に閉じこもっていた。日々は静かで、でもどこか温かみに欠けるものだった。
ある日、家族は一匹の犬を家に迎え入れることになった。最初はただのペットとして、しかし彼らが知らなかったのは、この犬が家族にもたらす小さな奇跡だった。
犬は名前を「コジロウ」と名付けられた。コジロウは小さくても、その存在感は家の中でひときわ際立っていた。彼の無邪気な行動や、愛くるしい表情は、家族の誰の心にも明るい光を灯した。
夜、家族がリビングで集まるようになった。テレビを見る代わりに、コジロウの面倒を見たり、一緒に遊んだり。話す内容はコジロウのことばかりだったけれど、それが不思議と気にならなかった。むしろ、その話題があることで、家族間の壁が少しずつ溶けていくのを感じた。
日が経つにつれて、彼らの会話はコジロウだけに限らなくなり、お互いの日常や感じたことについても話すようになった。父親は仕事の悩みを打ち明け、母親は昔の夢について語り、子どもたちは学校での出来事を話し始めた。
そして、ある日の夕食時、家族は一緒にキッチンに立ち、コジロウのための特別なご飯を作ることにした。その過程で、笑い声が絶えなかった。彼らはお互いの協力を得て、美味しい料理を完成させた。それはただの食事以上のものだった。家族の絆を深め、互いに対する理解と愛情を育んだ瞬間だった。
コジロウが彼らの生活に加わってから、家族は確かに変わった。彼らはもはやお互いに無関心ではなくなり、一緒に過ごす時間を楽しむようになった。コジロウはただの犬ではなく、彼らの家族の一員として、かけがえのない存在となった。
そして、家族は気づいた。幸せとは、壮大なものではなく、小さな瞬間に隠れていることを。コジロウとの日々は、彼らにそんな大切な教訓を教えてくれた。
小さな奇跡は、いつでもどこにでもある。大切なのは、その奇跡を見つける心を持つこと。そして今、この家族にとっての奇跡は、コジロウという名の小さな犬だった。
